名古屋E&J法律事務所ブログ

2019.08.09 金曜日

好意同乗によって、損害賠償額は減額されるか

好意同乗によって、損害賠償額は減額されるか
1 問題の所在   無償で他人の運転する車に乗せてもらう場合を、「好意同乗」と言います。好意同乗中に、運転者に過失があって事故が起き、障害を負ったとします。保険会社は、このような場合、当然のように好意同乗を理由とする減額を主張してきます。果たして、好意同乗者は、運転者に対し、損害の全額について、賠償請求をすることが出来ないのでしょうか。
2 裁判例の概観1 ~ 減額が肯定された事例  後述するように、単に交通事故を起こした自動車に同乗していただけでは、減額事由にはなりません。しかし、以下のようなケースでは、損害賠償請求が全額認められていません。
(1)同乗していた被害者に落ち度がある場合  同乗者に、事故の発生に対する何らかの帰責事由が認められる場合には、過失相殺を理由に、全損害について減額される場合があります。  ① ヘルメットを装着しないで原付自転車に二人乗り(3割減額 大阪地判平成11年7月26日)  ② 夜間、降雨の中を速度違反をして事故を起こした部下運転車両に乗っていた上司(1割減額 名古屋地判平成11年1月9日)  ③ 速度違反、飲酒運転、居眠り運転によって事故を起こした車に同乗(1割5分減額 東京地判平成10年12月22日)  ④ 無免許運転、飲酒運転によって事故を起こした盗難車両に同乗(2割減額 那覇地班平成10年12月21日)                                                                                                                              など
(2)同乗者の落ち度が必ずしも明確にされないまま減額されたケース  ① これまで運転者が同乗者を常に同乗させて大学まで送迎していたという恋人関係にあった大学生について、深夜であったという以外に事故の発生が予測されるような事情がなかったが、1割減額されたケース(松山地判平成8年7月25日)  ② 同級生とその友人らを同乗してスキー場へ案内した運転者が、スキーを終えた翌日の帰途に事故を引き起こした場合について、同乗者において、前夜に出迎えて往路を運転し、翌日、スキーをした後、復路も運転していた運転者の立場に対する配慮を欠いたとして2割減額されたケース(岡山地判平成6年4月28日)  ③ 同乗者の女友達を誘って食事に行く途中で事故にあったケースで、信義則を理由に2割を減額(大阪後半平成5年3月31日)                                                                                                                              など (3)慰謝料のみが減額されたケース     被害者に落ち度がないため過失相殺の対象にならず、また、好意同乗を理由とする減額も許されないとしながら、慰謝料が減額されたケースもあります。  ① 内縁の夫がいる元看護師が、大学生と出奔し、大学生の借りたレンタカーに同乗中に事故に遭った事案につき、過失相殺を否定した上、出奔中の事故であったこと、事故当時、元看護師が精神安定剤を服用して眠っていたことは、慰謝料の減額事由として考慮されるべきであるとした(和歌山地判平成6年12月20日)  ②  所有者の娘が助手席に同乗して運転者に道案内をしていた事案につき、好意同乗減額が争点とされたが、慰謝料の算定に際して考慮すれば足りるとした(大阪高判平成2年7月20日)
3 裁判例の概観2 ~ 減額が否定された事例  好意同乗者に、事故の発生原因との関係で帰責事由がない場合には、単に好意同乗であったというだけでは減額されていません。  ① 好意同乗者に落ち度、帰責事由がないとされたケース(東京地判平成12年2月29日)(岡山地判平成11年11月29日)  ② 「同乗者に、事故につながるような無謀運転を誘発あるいは容認した事情は認められない」(東京地班平成7年12月7日)  ③ 速度違反を原因として事故が発生した場合に、「同乗者が速度超過を積極的に指示、容認するなど危険を助長したとは認められない」(大阪地判平成7年3月30日)
③ 保険外交員であった同乗者が営業所指導員の運転する車から降りてその前方の車道を横断しようとした際、同乗していた車両に衝突されたという事故につき、被害者にも落ち度がないわけではないが、事故の原因は、運転者がブレーキとアクセルを間違えるという運転操作のミスによるものであったとして好意同乗減額を否定(岡山地班平成9年11月25日)                                                                       など 4 まとめ   このように、判例実務は、好意同乗であったという理由だけで、損害賠償請求を当然に制限するわけではありません。事故発生にいたる経緯、それに対する好意同乗者の関与の程度の個別具体的な判断によって、減額が認められないこともあります。保険会社から示された好意同乗減額について、納得が出来ない場合は、弁護士等専門家にお尋ね下さい。