名古屋E&J法律事務所ブログ

2019.10.21 月曜日

後遺障害等級が非該当とされた後、異議申立によって後遺障害が認定された場合における消滅時効の起算点

Aさんは平成8年10月14日に交通事故に遭い、右膝痛等の後遺障害が残り、平成9年5月22日に症状固定になりました。しかし、平成9年6月9日,非該当との認定を受けました。Aさんは納得がいかず、平成11年7月30日,異議の申立てをしたところ,後遺障害等級表12級12号の認定を受けました。その後、Aさんは平成13年5月2日,加害者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として訴訟を提起しました。

 さて、民法724条は以下のように規定しています。
「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」
 上記事例においては、平成9年5月22日の症状固定、平成9年6月9日の非該当の認
定を受けてから訴訟を提起するまで3年経過している一方、後遺障害等級12級の認定
を受けた平成11年7月30日から訴訟を提起するまでは3年が経過していないため、
いずれを消滅時効の起算点とすべきかが問題となりました。
 この事案において、最高裁判所(最判平成16年12月24日)は以下のように判断しました。
「前記の事実関係によれば,被上告人は,本件後遺障害につき,平成9年5月22日に症状固定という診断を受け,これに基づき後遺障害等級の事前認定を申請したというのであるから,被上告人は,遅くとも上記症状固定の診断を受けた時には,本件後遺障害の存在を現実に認識し,加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に,それが可能な程度に損害の発生を知ったものというべきである。自算会による等級認定は,自動車損害賠償責任保険の保険金額を算定することを目的とする損害の査定にすぎず,被害者の加害者に対する損害賠償請求権の行使を何ら制約するものではないから,上記事前認定の結果が非該当であり,その後の異議申立てによって等級認定がされたという事情は,上記の結論を左右するものではない。そうすると,被上告人の本件後遺障害に基づく損害賠償請求権の消滅時効は,遅くとも平成9年5月22日から進行すると解されるから,本件訴訟提起時には,上記損害賠償請求権について3年の消滅時効期間が経過していることが明らかである。」
 したがって、消滅時効の起算点は症状固定の日が基準となります。被害者としては、異議申立をしながらも、加害者との間で時効が完成する前に債務承認の書類を取り交わす等の対処をすることが必要となるでしょう。