名古屋E&J法律事務所ブログ

2019.10.30 水曜日

民法423条により自賠法16条1項の直接請求権を代位行使出来るか否か

民法423条1項本文は、「債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。」と規定しております。

 

債権者が債務者に対して金銭債権を有し、債務者が第三債務者に対して金銭債権を有している場合を想像して下さい。債務者が第三債務者に対する金銭債権を行使すれば、債権者に対する債務を支払うことが出来るにも関わらず、「どうせ行使しても債権者に持っていかれるならいいや。」とばかりに権利を行使しないことが考えられます。同条は、そのような場合に、債権者が債務者に代わって、第三債務者に対する金銭債権を行使することが出来ることを定めております。
 
そこで東京地判平成24年8月23日で問題となったのが、交通事故において、同条を用いて、加害者が自賠責保険会社に対して有する自賠法16条1項に基づく損害賠償額の支払請求権を代わりに行使することが出来るかどうかという点です。
 
判決では、「自賠法16条1項所定の自賠責保険の保険者に対する損害賠償額の支払請求権は、被害者保護を徹底するという責任保険の社会保障的性質に鑑み、同法18条により差し押さえることはできないとされている。そして、差押えを許さない権利は、債権者の共同担保となるものではないから、その性質上債権者が民法423条1項に基づき代位行使することはできない債権であるというべきである。」と判断しました。
 
よって、交通事故の加害者が自賠法16条1項を利用できるにも関わらず利用しない場合であっても、被害者は同権利を代わりに行使して被害弁償を受けることは出来ないということになります。