名古屋E&J法律事務所ブログ

2019.11.12 火曜日

減収がない場合の逸失利益

後遺障害が認められた場合、逸失利益を請求することができます。   ここでいう逸失利益とは、事故によって後遺障害が生じ、労働能力が減少するために、将来発生するものと認められる収入の減少のことをいいます。

 
  しかし、実際の事案では、後遺障害が認められつつも、実際には減収が生じていない(事故前と同様の収入がある)ということがあります。   そのような場合、加害者側から、実際には減収が生じていないのだから逸失利益などないという主張がされます。
 
  このような場合、多くの判例では、その収入の維持が被害者の特別の努力によるものかどうかということが重視されます。
 
  最高裁昭和56年12月22日判決は、以下のように述べています。   「かりに交通事故の被害者が事故に起因する後遺症のために身体的機能の一部を喪失したこと自体を損害と観念することができるとしても、その後遺症の程度が比較的軽微であつて、しかも被害者が従事する職業の性質からみて現在又は将来における収入の減少も認められないという場合においては、特段の事情のない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害を認める余地はないというべきである。」
 
  「後遺症に起因する労働能力低下に基づく財産上の損害があるというためには、たとえば、事故の前後を通じて収入に変更がないことが本人において労働能力低下による収入の減少を回復すべく特別の努力をしているなど事故以外の要因に基づくものであつて、かかる要因がなければ収入の減少を来たしているものと認められる場合とか、労働能力喪失の程度が軽微であつても、本人が現に従事し又は将来従事すべき職業の性質に照らし、特に昇給、昇任、転職等に際して不利益な取扱を受けるおそれがあるものと認められる場合など、後遺症が被害者にもたらす経済的不利益を肯認するに足りる特段の事情の存在を必要とするというべきである。」
 
  このように、後遺障害はあるが減収が生じていないようなケースでは、本人の特別の努力などによって収入が維持されているということを主張立証する必要があります。