名古屋E&J法律事務所ブログ

2019.11.13 水曜日

役員報酬と休業損害

交通事故に遭ったために、入院する必要が生じて、仕事を休まなければならず、収入減少が生じてしまった、これが休業損害です。

給与所得者については、収入喪失額を比較的把握しやすいと言えますが、会社役員の場合はどうでしょうか。
この場合、判例は、取締役報酬額をそのまま全部基礎収入とはせず、取締役報酬を①労務対価部分と、②利益配当部分に分け、①労務対価部分は給与取得者と同様休業損害の基礎として認めるものの、②利益配当部分は、企業経営者が受け取る配当であってこれは休業により失われないので、損害算定の基礎から外す、という立場をとっています。
そして、何%が①労務対価部分で、何%が②利益配当部分かというのは、会社の規模や、当該役員の地位・職務内容、役員報酬の額、他の役員や従業員の職務内容と給与の額等を参考に総合的に判断されることになります。
例えば、会社の従業員が3名(うち2名は妻と弟)で、経営者である事故被害者が、仕入れ、在庫保管、販売、配達等の業務を自ら全て行っていた事案では、報酬840万円(年額)を全て労務対価であると認められています(名古屋地判H12.6.26)。
また、40歳でITコンサルタント業の代表者をしている男性について、ITコンサルタントとしての高度の専門性、経験、知識等を要求される労務であることや、実際この男性が仕事をできなくなったことで売り上げが相当減少していること等から、事故当時の役員報酬月額310万円の80%を労働対価と認定した例もあります(横浜地判H20.8.28)。
このように、小規模な会社であったり、その人の能力に頼るところが大きい場合には、かなりの割合で②労務対価部分と認められるようです。また取締役であっても名目取締役であるような場合には全額認められる場合が多くなります(東京地判H11.6.24)。
他方で、夫が代表取締役をしている同族会社において、2名のパート従業員と肉体労働に従事していた専務取締役の女性につき、会社は休業中でも人員の増員は無く、売り上げ・利益とも横ばいもしくは増加する一方、他の役員報酬が増加したり、復職後軽作業であるにも関わらず、月額報酬金が45万円であることなどから、実質的な利益配当部分は少なくとも40%はあったと判断した事例もあります(大阪地判H15.4.30)。