名古屋E&J法律事務所ブログ

2020.01.23 木曜日

交通事故 無傷限界値

無傷限界値という難しい言葉がある。時速5km程度の速度による追突事故ではむち打ち症は起こらないという考え方だ。首にかかる力が一定以下では力の場合、人は傷害を負わないという考え方で、それを無傷限界値と呼んでいる。無内容でも難しい言葉で飾ればありがたくなるという例の典型だ。

 
 低速度での追突事故の場合、保険会社は工学鑑定書を提出することがある。これは、被害車両などの被害の大きさ、ブレーキ痕、道路状況などいろいろな事情から追突速度を推定して、この程度の速度ではむち打ち症は起こらないと結論づける。
 
 しかし、そもそもこうした工学鑑定はそれほど確立した分野ではない。人体実験の結果そのものもいいかげんだ。人は必ず同じ姿勢にいるという前提に立っている。など、いいかげんな事情をもっともらしく積み上げていく手法だ。
 
 実際の裁判では工学鑑定をそれほど重視している訳ではないと思う。低速度で後遺障害を否定した事例でも多いが、認めた事例も多い。日本損害保険協会委託調査(1999年)でも、低速度でむち打ち症が発症した事例を紹介し、無傷限界論を問題視している。
 
 私の場合、後遺障害の認定を争うことが多いのだが、工学鑑定で負けたことはない。彼らはそれほどいいかげんだ。