2018.07.16 月曜日

豊橋発:交通事故 脳挫傷と老人性痴呆との区別

この交通事故事件は、自動車と高齢者が乗った自転車が衝突した交通事故です。被害者は、事故後1年半ぐらいしてから痴呆が生じるようになった事例で,痴呆について事故との因果関係を認めました(大阪地裁H7.12.11交民28.6.1720)。


 この事件は交通事故後,被害者に意識喪失などがあったことや,事故後に水頭症などが認められていた事例で,事故後の被害者の脳に対する影響が比較的解明されていることから裁判所は賠償を認めたと考えられます。

 以下は判決の重要部分です。
 
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  原告には本件事故前には脳室拡大をきたす特別な脳疾患はなかつたが、受傷直後から軽度の脳萎縮があり、脳室が拡大気味であつたことから、老人性の脳萎縮による脳室拡大の可能性を全く否定することはできず、右脳室拡大が原告の痴呆症状に何らかの影響を与えたのであろうと推認できる。しかも、本件事故による原告の頭部への衝撃については、本件事故直後のCT写真ではクモ膜下出血が認められず,硬膜下血腫の診断のみであり、保存的治療により一か月足らずで軽快し、退院を許可されている。

しかしながら、原告の受傷直後のCT所見に関しては、前記のとおり、クモ膜下の出血がある程度流れてしまうことでCT写真上明らかにならない場合があるし、CT写真では分からない脳挫傷が存在している可能性も否定できないうえ、原告には、入院当初、意識障害2があり、右片麻痺と右顔面神経麻痺の症状が出現していることに照らせば、脳挫傷の存在を全く否定してしまうことができず、クモ膜下に髄液、その下に脳があることから、右脳挫傷の際にクモ膜下出血が引き起こされていた可能性も考えられる。

また、本件事故後生じた歩行障害については、当初、第三ないし第四と第四ないし第五頸椎の硬膜脊髄管への圧迫に起因したものと判断されて前方固定術が施行(二回)され、歩行障害の原因となる頸部の状態が一応解消され、一旦歩行障害が改善されたにもかかわらず、再び歩行障害が出現したこと(脳萎縮による脳室拡大の場合は歩行障害は生じにくいこと)を勘案すれば、脳室周囲に脳脊髄液が吸収される所見は認められないが、脳室拡大、造影剤消失遅延の所見からみて水頭症の疑いを全く捨て去ることはできず、むしろ事後的にみれば、外傷性クモ膜下出血に起因した脳脊髄液の吸収障害による水頭症による歩行障害とみることができる。

そうだとすれば、脳室拡大の状態の脳が外傷を受けて脳脊髄液が吸収障害を起こす水頭症が発症し、右水頭症から痴呆症状が発現したものとみるのが相当である(硬膜下血腫の位置から左頭頂部付近に外傷を受けたものと認められ、他方、痴呆の原因となる疾患は前頭葉に認められるが、外傷箇所と障害箇所が必ずしも一致しない外傷性脳障害の実情に照らせば、左頭頂部付近の外傷に起因して前頭葉に痴呆疾患が生ずることも十分に考えられる。)。 

以上によれば、原告の痴呆症状は、受傷前からすでに存した脳萎縮を伴う脳室拡大に加え、本件事故に起因した外傷性の水頭症が発症したために生じたものと考えるのが相当であるから、本件事故と原告の痴呆症状には相当因果関係が認められ、右痴呆発症の機序及び前記認定した原告の症状の推移、治療経過を勘案すれば、原告が受傷前から有していた脳室拡大の素因が痴呆発症に与えた寄与度は四割と認めるのが相当である。