名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.10.02 月曜日

監督義務者の責任

 民法709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています。この規定に従い、交通事故により損害を被った被害者は、故意・過失によって被害者に損害を与えた加害者に対して、損害賠償を請求することが出来ます。
 ここで、加害者が未成年者であるケースについて考えてみましょう。
 民法709条の要件を満たす限り、加害者が未成年者であっても、被害者は損害賠償請求をすることが可能のように思われます。
 ところが、民法712条は、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」と規定しています。
 この規定に従うと、「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」を備えていなかった場合には、未成年者に対して損害賠償請求することが出来ないことになってしまいます。
 では、この場合被害者は全く救済されないのでしょうか。
 当然、そのような結論は当事者間の公平を害することになりますので、民法714条1項は、「前2条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」と規定しています。
 従って、未成年者が「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」を備えていなかった場合については、監督義務者に損害賠償請求をすることが可能ということになります。
 ここまでを整理すると、次のとおりになります。
 ①未成年者が「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」を備えている場合
  → 未成年者に対して損害賠償請求をすることが可能
 ②未成年者が「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」を備えていなかった場合
  → 監督義務者に損害賠償請求をすることが可能
 もっとも、①の場合、被害者は未成年者である加害者に対して損害賠償請求出来たとしても、未成年者に支払 能力がないことも多く、実質的には救済されない可能性が生じます。
 そこで、このような場合には、次のように考えて、未成年者の親権者等に対して損害賠償が出来るかどうかを検討することになります。
 すなわち、先ほど記載した民法709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています。ここで、加害者を未成年者の親権者等と考え、未成年者の親権者等が故意又は過失によって、未成年者に対する監督義務を怠り、他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した、と考えるわけです。
直接事故を起こした加害者であれば、前方不注意などの義務違反は比較的明らかであり争いにならないことも多いのですが、監督義務違反は一見して明白ではないため、ハードルは決して低くはありません。
  しかしながら、被害者の実質的な救済のためにも、積極的に検討する必要があるでしょう。