名古屋E&J法律事務所ブログ

2018.08.05 日曜日

事業所得者・会社役員で減収がない場合の逸失利益

後遺障害が認められた場合、逸失利益を請求することができます。
  ここでいう逸失利益とは、事故によって後遺障害が生じ、労働能力が減少するために、将来発生するものと認められる収入の減少のことをいいます。

  しかし、実際の事案では、後遺障害が認められつつも、実際には減収が生じていない(事故前と同様の収入がある)ということがあります。
  そのような場合、加害者側から、実際には減収が生じていないのだから逸失利益などないという主張がされます。
  たとえば、会社役員のケースですが、名古屋地裁平成19年10月26日は、この点について以下のように述べ、逸失利益を認めました。
  「被告は、本件事故後に原告松男が原告会社から受け取っている役員報酬が増大していることから、原告松男には逸失利益が認められないと主張する。
 しかしながら、・・・原告は上記後遺障害による疼痛や疲れやすさのため、実際に就労する上で相当程度の制約を受けており、原告の業務内容に照らすならば、その制約の程度は軽微なものとはいえず、原告松男は、相当の努力によって上記後遺障害による症状に耐えつつ業務を遂行しているものと認められる。
 また、・・・本件事故後、原告会社に対する比較的規模の大きい工事の発注が続いたことによって、原告会社の売上は従前に比して増え、そのために、税理士の指導もあって原告松男の役員報酬が増額されることになったものであることが認められるところ、原告会社において今後ともそのような売上が見込めるものとまでは考えにくい。
 さらに、原告会社においては、その規模が上記のようなものであることからして、現在、業績が好調であるからといって、今後とも安定した業績を得られることが確実とは解しがたい。そして、将来、原告松男が就職したり転職したりする際において、原告松男の上記後遺障害が原告松男にとって不利益な影響を及ぼすおそれがあることは明らかである。
 そうすると、原告松男については、現在のところ本件事故後の現実の収入の減少はないが、なお、後遺障害による逸失利益の発生を損害として認めるのが相当である。」
会社役員が後遺障害を負った状態で相当な努力をして収入を維持していることもありますし、会社の業績がたまたま良くなったという事態もありえます。
上記判例は、減収がないから逸失利益なしというような短絡的な考えではなく、被害者の実態に即した判断をしているといえます。
事業所得者や会社役員の方についての逸失利益の算出は、あらゆる判例を分析をした上で、ケースごとの詳細な事実調査・確認が必要です。
 
(この記事は弁護士の小林哲也が担当しました)
 
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