2013.08.22 木曜日

豊橋発:事故5年後に診断された手根管症候群の傷害について

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裁判例紹介:事故5年後に診断された手根管症候群の傷害について、事故との因果関係が認められた事例(名古屋地裁平成16年3月31日判決)

 
1 事故の態様  本件は、平成5年7月3日午後7時20分頃に、交差点で発生した自動車と自転車の衝突事故です。  加害車両は、駐車場を出る際、方向指示器を出さず、中央線を越えて、被害者の存在に気づかず被害者に
向かって進行し、自転車を反転させて衝突を回避しようとした被害者及び被害者の自転車に、車両前部右側を衝突させ、被害者及び被害者の自転車を道路上に叩きつけました。
 
2 事故の結果 (1)被害者は、頭頚部外傷、全身打撲、外傷性頚椎椎間板ヘルニアを負い、平成8年4月11日、A病院にて症状固定と診断され、平成10年4月13日、後遺障害等級第12級12号に該当すると認定されましたが、その後も通院をし、平成10年10月12日、F病院にて両側手根管症候群の診断を受け、両手の手術を受けました。
(2)被害者の通院状況は下記のとおりです。  
ア 通院1 医療機関(カッコ内は実通院日数)
  A病院 H5.7.3~H12.12.4(755日間)
  B病院 H6.3.7~H10.11.30(9日間)
  C病院 H9.5.8~H9.5.9(2日間)
  D病院 H9.12.22~H10.8.3(14日間)
  E病院 H10.8.26~H10.9.18(4日間)
  F病院 H10.10.12~H13.2.28(72日間)
  G病院 H11.7.27~H11.9.25(6日間)
  イ 通院2 接骨院等(カッコ内は実通院日数)
  H整体 H5.7.22~H8.6.25(115日間)
  I整体 H9.5.27~H13.1.20(20日間)
  J整体 H11.7.30~H11.9.8(16日間)
  K整体 H11.10.15~H13.2.28(59日間)
 
3 被害者の傷害と事故との因果関係 (1)被害者の主張する傷害のうち、手指の痛みの症状について、事故との因果関係が争われました。
(2)これは、事故当初、医師が頚椎椎間板ヘルニアから生じる症状とすることに疑問を感じながらも、ヘルニアによる神経の圧迫に起因する症状であると考えて、理学療法を続けていたものですが、事故から5年以上経ち、症状固定と診断されてから2年半経過した平成10年10月12日に至って、F病院において、手根管症候群であると診断されたものです。   被害者は、同病院で手術を受け一定の症状の改善が認められました。その後も椎間板ヘルニア様の症状が継続しましたが、被害者は手術による治療を希望せず、平成13年2月28日に症状固定と診断されました。
(3)加害者は、被害者の手根管症候群は事故後5年経過して事故と関係なく発生したと主張し、これに沿う医師の意見書を提出しました。
(4)裁判所は、事故の際、被害者が両手を強く地面に打ち付けていること、事故直後から一貫して両手の強い痛みを訴えていたこと、事故以外に手根管症候群が発症する誘因がないことから、加害者の主張を退け、被害者の手根管症候群について事故との因果関係を認めました。
4 その他、接骨院での治療費について、医師による積極的な指示があった等の事情はありませんでしたが、被害者の医療機関における治療効果が思わしくなかったこと、接骨院等によるマッサージ等による施術も被害者の症状を緩和するという効果があったことから、相当因果関係のある損害と認められました。
5 本事例の教訓   交通事故では、治療と事故との因果関係が争われることが多いです。本件は、「症状固定」の診断を受けた後、診断名が変わり、手術によって症状の改善が見られたケースですが、加害者側から事故と治療の因果関係を否定される典型的なケースと言えます。  このようなケースでも、事故態様、事故直後からの愁訴の一貫性、事故以外の原因要素がないことなどによって、裁判上、因果関係が認められることは、珍しくありません。   痛いときは、我慢せずに、お医者様に訴え、治療を受けることが大切です。