2017.02.02 木曜日

豊橋発:交通事故 頭の解剖学的な構造

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交通事故 「硬膜の肥厚」,頭の解剖学的な構造

 脳性気随液減少症はまだまだ確立した概念であるとは言い難い状況にある。
 脳脊髄液減少症,脳脊髄液漏出症,低髄液圧症候群など,体に生じた症状,減少に応じて名前がついている。
 中でも2011年 厚生労働省研究班の報告はいわば公共的な機関が作成した報告書であることから裁判でも尊重されやすい。この厚生労働省研究班報告は,
 
   ① 脳脊髄漏出症の画像診断基準
   ② 低髄液圧症の診断基準
 
 について整理している。①については漏出箇所として腰部以外を求めたりするなど患者側にとってけっこう厳しい基準となっている。厚生労働省研究班の報告はあるい意味,確実な判断を示した点ではこれに該当しなければ全て疾病とは言い難いという訳ではない。もっとも,診断基準は損害賠償問題とは別の問題と余計なことまで書いてあるためいろいろ使い勝手が悪いところが多い。
 
 しかし,②については比較的明瞭なものとなっている。②の一つに脳MRIにおけるびまん性硬膜造影所見(硬膜肥厚)のみを『強疑』所見とするというところがあり,「硬膜肥厚」という画像的な所見で判断できる点で裁判官にもわかりやすい基準となっている。もっとも,この「肥厚」というところが医師の判断に左右される点ではまだまだ立証上の難しさは存在する。
 
 ところで,硬膜に肥厚があるかどうかという点であるが,実際の裁判の場では損保側はかなり争ってくる。輝度の変化があるのは硬膜ではなく頭部の脂肪などといったりいろいろ言ってくるため,頭の解剖学的な構造を正確にしておく必要がある。
 
 頭部はいくつかの層に分かれている。
    ① 頭皮
    ② 頭蓋骨
         イ 帽状腱膜
         ロ 帽状腱膜下層
         ハ 骨膜
         ニ 頭蓋骨
    ③ 髄膜
         イ 硬膜
         ロ くも膜,くも膜腔(普段はあらわれない)
         ハ 軟膜
    ④ くも膜下腔
 
 低髄液圧減少では髄液の減少から硬膜の肥厚が起こるとされている。つまり,脳内の容積は一定であるため,脳内の圧力が減少すればその分どこかが膨らまなければならない。それが,硬膜の肥厚となってあらわれることになる。
 また,硬膜とくも膜との間やくも膜下腔に髄液が貯留していれば何らかの理由で髄液圧が減少している所見であると言える。
 
 また,脳脊髄液減少症では下垂とよばれる現象,つまり脳や脊髄が下に動くためくも膜腔が拡大することになる。
 
 なんだか細かい話になるが,裁判ではこうした細かい作業をひとつひとつ解明して立証していくことになる。