2013.09.26 木曜日

豊橋発:高齢者と交通事故(2)

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1 はじめに
2 高齢者事故における事故と後遺障害等との因果関係。
(1)責任論 —————前回まで————–
(2)損害論
  ア   交通事故の損害は、①傷害による損害、②後遺障害による損害、③死亡による損害に、大別されますが、高齢者には、加齢からくる諸事情の関与が否定出来ず、若年層とはまったく同じには扱われない現実があります。
   高齢者の場合は、例えば、治療期間が蔓延化したり、比較的軽微な事故であっても死亡や重篤な後遺障害が残存するなど、若年層では予想しがたい因果的経過をたどって重篤化し、損害が拡大する事態がしばしば見受けられます。その場合には、(1)責任論で述べた例とは異なり、加害行為の存在が認められたとしても、例えば、事故による死亡なのか、それとも事故とは無関係に事故後亡くなったのか、あるいは、事故によって重篤な後遺障害が残存したのか、それとも、事故とは無関係に重篤な障害が生じたいすぎないのかなどが争われることになります。    また、既往症や既存傷害、事故と無関係に生じた病気などがある場合、受傷内容と因果関係が認められる治療関係費、介護費用等の範囲が問題となることも多いです。    
  イ 裁判例から    
 (ア)直接の死因が内因性の疾患である場合      
 (○は因果関係が認められたケース。×は否定されたケース)      
○ 事故と胃潰瘍による失血死との因果関係を認めた。但し、被害者の子個人的要因による70%減額。(大阪地判H9.1.23)        
○ 尿路感染症を原因とする敗血症による死亡と事故との因果関係を認めた。但し、既往症等の影響による20%減額。(大阪地判H9.11.20)      
○ 直接の死因が肺炎(誤嚥性肺炎など)である場合、受傷内容、死亡時期などにもよるが、事故との因果関係が認められ、素因減額されないことも少なくない。        
× 事故により脳挫傷、硬膜下血腫、頭部挫傷等傷害を負い、3ヶ月後に症状固定と診断され症状も落ち着いたが、3年後、外傷とは無関係のS状結腸癌とその手術後の複合気道感染症により死亡した事       
例。一般論として、事故が全体的に被害者の体力を相当弱め、死期を弱めることになったことは認めたが、事故との間の相当因果関係は認められなかった。(東京高判H7.2.28)      
× 受傷の主たるものは腓骨骨折であったところ、事故から9ヶ月を過ぎたころに、高血圧性心不全、急性肺水腫、重症肺炎及び急性心不全で死亡した事例(名古屋地判H12.4.28)   
 (イ)事故から死亡まで相当期間が経過した場合      
○ 入院351日後、肺炎で死亡。但し、高齢による抵抗力免疫力の低下を理由に30%減額。(神戸地判H8.5.23)      
○ 事故により脳挫傷等の傷害を負った81歳の女性について、主治医が事故とは無関係に発生したと診断した脳内出血による死亡について、「その(主治医の判断の)医学的根拠は明らかでないといってよい」とした上で、「受傷直後のプレショック状態を脱した後11ヶ月にわたりほとんど症状の改善が認められないまま死亡したいう経過」などから、因果関係を認めた。(岡山地判H12.4.6)      
○ 事故から1年4ヶ月後に大葉性肺炎を併発して死亡した(大阪地判H14.6.11)    
 (ウ)軽微な外傷であったが、死亡や重篤な後遺障害が残存した場合    
○ 受傷はそれほどの重症ではなかったが、臥床が長期となり、高齢や肥満も加わって次第に呼吸器障害、肺炎を併発して死亡した84歳男性について、事故と死亡の因果関係を認めた上で、その寄与度は90%とした(神戸地判H10.2.19)   
 (エ)既往症の影響が明らかな場合      
× 肝硬変、糖尿病の治療を受けており、事故前年から糖尿病の症状が顕著となっていた75歳女性訪問販売員について、稼動による逸失利益を否定、休業損害は前年年収の2分の1で算定した事例(高知地判H10.1.22)   
○ 事故により脳挫傷の傷害を負った81歳女性の、事故後24日での死亡について、既往症である心臓弁膜症のための投薬中止等による増悪と全身状態の悪化によるものとして事故との相当因果関係を認めた上で、既往症を理由として損害の50%を減額した事例(神戸地判 H10.7.9)                                                                                                                                    以上