2013.10.03 木曜日

豊橋発:会社分割と債務 法律的な書面ですが・・・・・

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 会社法には会社分割制度が設けられている。これは複数の事業部門がある場合、それを独立させて経営努力を促したり、部門の売却を容易にする目的で設けられた。会社組織をもっと柔軟にして、M&Aを活発化させようと考えられたのである。会社分割は、事業の譲渡と比較して、手続きが容易であったり、個別の財産譲渡契約が不要であったり、資格など一定の取引上の地位を承継させたりする点で簡易である。
 
 しかし、一方で会社整理、事業再生の手段としての利用も活発である。これは、業績が悪化して債務に苦しむ企業に対して、比較的業績の良好な部分を新会社として独立させるという方式である。倒産によって全ての事業を殺してしまうより、せめて良好な部分を救済した方がよいという考え方だ。確かに、その事業が生き残ることで、一部ではあるが顧客関係は取引が維持されるし、雇用も確保される。企業は活動を維持することで社会に貢献するから、一部とはいえ生き残った方が、社会全体から見れば有益だと思う。
 
 このように、会社分割が会社整理や事業再生に活用されるのは、制度上債権者保護に薄い点にある。分割会社(旧会社)の債権者は会社分割に対して異議を述べることはできない(会社法810条1項2号)。会社分割を否定するためには分割無効の訴えが必要であるが、提起できる期間制限があったり、無効事由も制限されている。
 
 さらに、分割に際して旧商法ではそれぞれの会社に「債務ノ履行ノ見込ミアルコト及其ノ理由ヲ記載シタル書面」を用意しなければならないとしていたところ、新会社法では「債務」の「履行の見込みに関する事項」に変わった。つまり、「見込ミアルコト及其ノ理由」が不要になった。これは分割に際して「見込みあること」が要件ではなくなったとも考えられる。つまり、債務の状態が明確に示された書面が用意されていればよいというで、履行できるかどうか関係ないという考えがあるのである。
 
 こうしてみると、会社分割は旧会社に残された債権者にとってかなり過酷だということになる。主要な事業は新会社(新設会社)に移しておいて、債務だけ旧会社に取り残しておく、旧会社は放置され、あるいは破産されて消滅する、だからといって、債権者は取り残されることについて文句を言うところがない。これは余りにも債権者保護に欠けるのではないかと言うのである。
 
 確かに、市販の入門書などでは、債務逃れのために積極的に会社分割を活用することがいいというものもある。債務者主導の会社整理などと体裁の良い言葉を並べている例もある。極端な例は借りた金は返すななどという場合もある。メディアとしてはこういう言い方は注目されるかも知れないが、モラルハザードを奨励するようなもので私はこういう極端言い方は嫌いだ。
 
 しかし、早晩潰れてしまう会社に対して、どことん落ちるまで落ちろというのは間違いだと思う。切り取って助かる部分があるならそれをきちんと切り取り、助けていくのが社会的には有益だ。一つの企業がノウハウを獲得し、人間関係を作るのには何年もかかる。この人間関係は社会にとって大きな財産だ。この財産を腐らせず活かすことは社会全体にとって良いことなのだ。
 債務者は「借金は返さなくても良い」などと開き直らないで、「社会に活かされている」「社会に役立つ企業をつくる」という謙虚な気持ちで臨むべきではないだろうか。