2013.10.03 木曜日

豊橋発:会社分割と債権者取消権(論点の整理)

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 会社分割は驚くほど債権者保護に薄い。そこを活用して事業再生や会社整理に利用することになる。しかし、債権は切り捨てられてしまうため、債権者にとっては何とかならないかということになる。

 
 会社分割に対抗する債権者の手段としてはおそらく詐害行為取消権(民法424条)が唯一のものではないだろうか。これは債権者を害する法律行為を取消し、財産を取り戻すことができるという条文だ。
 民法は次のように定めている。 「債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。」
 
 債権者を害するというのは、法律行為者が無資力(返済不能状態)であるにも関わらず財産を流出させる行為である。それには①詐害性(責任財産を流出させること)、②害意(債務を逃れる意図)などを勘案して詐害行為であるかどうか判断される。
 
 この場合は、会社分割行為が対象となる。この会社分割に対して詐害行為取消権を行使できるかどうかについては判例、学説とも争いがあって、まだ決着がついていない。
 
争点① 組織行為に当てはめ可能か。 詐害行為取消権は取引行為を想定している。会社分割は組織的行為であるから当てはめられないのではないか。しかし、最高裁は現物出資行為についても詐害行為取消権を当てはめている。会社分割の実質は財産の移転を伴うものであるから(会社法2条30号)、会社分割だからと言って詐害行為取消権を否定する理由はない。
 
争点② 分割無効訴訟と調和するか。 適用説は会社法が条文で詐害行為取消訴訟を排除していないこと、詐害行為取消の効果が相対的な無効と言われる効力であることから分割そのものを完全に否定する訳ではないことから、適用すべしとしている。
 しかし、会社分割では「分割無効の訴え」が用意されている。これは形成訴訟と呼ばれる類型で、会社分割の欠陥はこの訴訟によってのみ主張できる仕組みになっている。訴え提起期間は6ヶ月に制限されているし(法828条1項10号)、訴え提起できる者を制限している(同条2項)。判決の効力は対世効と言って、第三者にも及ぶし(838条)、未来に向かってのみ効力を失う(将来効、839条)。詐害行為取消権のような一般債権者に取消を認めると、特別に分割無効訴訟を用意した趣旨が意味を失ってしまう。
 
争点③ 株式取得があっても詐害性はあるか。 会社分割によって、分割会社(旧会社)は新設会社の株式を取得する。適正な対価があれば、債権者を害することはない。 適用説は、株式自体は流通性はないから、流通性があって換価可能な財産を失うのであるから詐害行為当たるという。 詐害行為取消権の判例では、不動産を売却して散失しやすい金員に替える場合、詐害性が認められる場合がある。それは金銭が散失することにより責任財産を構成しなくなる点を問題視している。しかし、この場合は、株式として確実に残るわけだから、金銭の例とは異なると思う。
 
争点④ 取消の効果は何か。 詐害行為取消権が認められた場合、相対的とはいえ会社分割が無効となるわけだが、この場合、何を返還するのだろうか。移転するのは会社という物的、人的設備の全部だ。 それもかなりややこしい話になる。適用説は返還不能だから代償金を支払えばよいとするが、そもそも返還不能なものを対象に取消するとはどういうことなのだろうか。
 
※ 肯定判例 福岡地裁H21.3.10、 否定判例 東京地裁H17.12.20