2013.10.24 木曜日

豊橋発:民法709条と自賠法3条の違い

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自動車に轢かれた結果、病院に入院したり、後遺症を負うなどの損害が発生した場合、自動車を運転していた者に対して損害賠償請求をすることになります。

その際の法律構成としては、民法709条(不法行為)を根拠とすることや、自動車損害賠償保障法3条(いわゆる自賠法3条)を根拠とすることが考えられます。
 
では、両者はどのような違いがあるのでしょうか。
 ① 加害者の範囲
  民法709条は、自動車の運転手など、被害者に対して不法な行為を行った者に対して広く責任追及することが出来ます。
  一方、自賠法3条は「自己のために自動車を運行の用に供する者」(=運行供用者)に対してのみ責任追及できます。なお、運行供用者とは、「自動車の運行支配と運行の利益を得ている者」と考えられています。
 ② 事故の対象範囲
  民法709条は、人に対する損害である「人損」及び物に対する損害である「物損」を対象とします。一方自賠法3条は「人損」のみを対象とします。したがって、交通事故があったものの物が壊れただけであり、人に対する損害が全くなかった場合には、自賠法は適用されません。
 ③ 要件
民法709条は、①原告の権利又は法律上保護される利益の存在、②①に対する加害行為、③②についての故意又は過失、④損害の発生及び額、⑤②と④の因果関係が必要となります。
一方、自賠法3条は、1)被告の運行供用者たる地位の取得原因事実、2)当該自動車の運行により原告の生命又は身体が害されたこと、3)損害の発生及び額、4)2)と3)の因果関係が必要となります。
両者の大きな違いは、過失責任の立証責任が加害者側に転換されていることにあります。すなわち、民法709条は責任を追及する側が運転者の過失を証明しなければならないのに対し、自賠法3条は運転者が過失がなかったことを証明しなければならないのです。
 
 民法709条と自賠法3条は、以上の点で大きく異なっています。事故に応じて、使い分けてください。
  
 なお、自賠法16条1項は、自賠法3条が成立する場合について、被害者に対する迅速な保護・救済を図るべく被害者請求を認めています。せっかくですので、この被害者請求と民法709条の相違点についても触れてみましょう。
 
④ 金額について
  民法709条は、被害者に生じた損害すべてについて請求できます。
  一方、被害者請求は保険金額の限度に限られています(自賠法施行令2条、別表1、別表2参照)。
傷害事故の場合
120万円。
後遺障害の場合
等級による。1級3000万円(常に介護を
要する場合は4000万円)、14級75万円。
死亡事故の場合
3000万円。
 
 
 
 
 
⑤ 過失相殺の扱い
  民法709条の場合、被害者の過失は過失相殺で考慮されます。
一方、被害者請求の場合、過失相殺は被害者に重過失がある場合に限って行われます。過失相殺による減額は、積算した損害額が保険金額に満たない場合は積算した損害額から、保険金額以上となる場合は保険金額から行うこととなります。
したがって、被害者側の過失の程度が極めて大きい場合などは、被害者請求に留めた方が金額が大きくなることも考えられます。
被害者の過失割合
後遺障害または死亡に係るもの
傷害に係るもの
7割未満
減額なし
減額なし
7割以上8割未満
2割減額
2割減額
8割以上9割未満
3割減額
2割減額
9割以上10割未満
5割減額
2割減額
 
 
 
 
 
 
 
⑥ 時効(除斥期間)
民法709条は、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間、もしくは事故から20年経過により請求出来なくなります(民法724条)。
一方、被害者請求権は2年間です(なお、近年自賠法19条が改正されたため、平成22年4月1日以降に発生した事故に限り3年となりました)。
 
 以上のような違いとなります。徒に訴訟を提起すればいいというのではなく、事故の態様から適切な方法を選択する必要があります。