2013.10.24 木曜日

豊橋発:高齢者と交通事故(4)

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1 はじめに 2 高齢者事故における事故と後遺障害等との因果関係 (1)責任論 (2)損害論 (3)素因減額1  ア 高齢者事故特有の問題点   イ 素因減額とは  ウ 素因減額で検討の対象となる被害者の素因  エ 裁判例(神戸地判平成12年7月18日)  オ 小括 —————ここまで過去の記事————– (4)素因減額2 ~ 裁判例概観 ~  ① 高齢であること自体       まず、高齢であること自体から、減額されることはありません(神戸地判H10.9.9など)。
  ② 体質的素因の寄与     ア 骨粗鬆症          加齢による骨密度の減少(身体の変性)は、その程度が年齢相応のものから大きく異ならないときは、     「個体差の範囲」に留まるのであるから、骨粗鬆症との診断が成されていたとしても、それのみでは、素因    減額の対象とはなりません(大阪地判H10.10.16、大阪地判H13.3.5、大阪地判H15.2.2等)。         したがって、減額を主張する側に、骨粗鬆症の程度と損害への寄与についての具体的な主張・立証が    求められることになります(神戸地判H13.4.20)。        
    イ 認知症         被害者が、事故後に認知症を発症したり、事故前から出現していた認知症が事故後に進行することがあ   ります。         しかし、認知症の原因には、脳血管障害やアルツハイマー病など外傷以外の原因もあるため、認知症の   発症ないし進行と事故の相当因果関係が争点となることがあります。一方で、発症の直接の原因が非外傷   性のものであったとしても、外傷等により長期の臥床を余儀なくされ、環境の変化やストレスにさらされ続け   たことが認知症発症の原因となることもあるとされていますので、非外傷性の認知症であっても事故との因   果関係が認められたケースもあります。         事故との因果関係が認められる場合には、素因(症状の程度、その原因となる疾患)の損害の発生・拡大   に対する寄与と、既存障害の損害算定における扱いという2つの問題が検討されます。         神戸地判(H13.8.8)では、事故後に発症した脳血管性認知症と合併したアルツハイマー型老年認知症を    発症した81歳の男性について、事故との因果関係を認めた上で、被害者の年齢や、交通事故でアルツハ   イマー型老年認知症が発症するとは限らないこと等を理由として、損害の20%が減額されました。         また、大阪地判(H15.2.6)では、見当識傷害、認知症等2級3号の後遺障害を残した66歳の女性につい    て、事故以前から脳梗塞及び軽度の認知症症状、軽度の四肢麻痺の障害があったことを理由として、損害   の25%を減額しました。        
 ウ 高血圧       高血圧など、高齢者には加齢に伴う循環器系の疾患を既往症がある場合がありますが、それが素因減額  の対象とされるためには、それが加齢現象を超えた程度にいたっているものであることが必要です。       大阪地判(H9.1.23)は、高血圧性脳内出血で左片麻痺等の後遺障害(障害等級3級3号)を残した73歳女  性について、被害者に加齢現象を超えた循環器系の基礎疾患があることを認めるに足りる証拠はないとし   て、減額wを否定しています。なお、このケースでは、事故による頭部への衝撃も相当なものがあり、健常者  であっても。事故の衝撃から事故直後の被害者と同程度の高血圧状態になるという医師の診断書が提出さ  れていました。したがって、疾患が存在したとしても、素因減額するだけの損害の発生・拡大は認められなか  ったと判断されたともいえます。
 ③ まとめ    最高裁判所は、被害者の体質的素因が疾患に当たらない場合には、通常人の平均値から著しくかけ離れ  た身体的特徴」でない限り素因減額の対象とならないと判断しています(H8.10.29)。このことからすれば、高  齢である被害者に、高齢に伴う体力の低下等が存在したとしても、その程度が著しく、かつ、損害の発生・拡  大に対する寄与が明らかである場合でない限り、素因減額の対象とされないといえるでしょう。                                                                                                    以上
 
 次回「高齢者と交通事故(5)では、過去に既に事故にあって後遺症を負っていた高齢者について、事故により後遺障害が加重された場合について、考えます。