2014.04.30 水曜日

豊橋発:心因性の被害

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 交通事故が原因で精神を病むことがあります。外傷後の神経症を外傷精神軽症と呼ぶことがありますし、うつ病になってしまうこともあります。このような精神の病気に対して裁判所はどのように判断しているでしょうか。

 
 例えば、事故後の被害が原因となり精神を病み、外傷性神経症に罹患し、さらにはうつ病となったという裁判例があります。うつ病では自殺を招来しやすいことから、さらに自殺と交通事故との因果関係が問題になります。
 
 この点最高裁判所は、事故→外傷性神経症→うつ病→自殺の因果関係を認めました(最高裁H5.9.9判時1477、42頁)。
 
 ところで、外傷後の神経症については最高裁のリーディングケースにはS63.4.21判決があります(判時1276、44頁)。
 
 この事件ではまず、しびれなどの神経症状がありました。裁判所はその症状については3年間については因果関係あるものとしました。しかし、3年間も症状が継続したのは、単に神経経路について何らかの傷害があったというだけでなく、被害者の心因的要素も加わっていたと認定し、民法722条を類推適用して減額したのです。
 
 この事例をどうみるかについてはいろいろありえます。現実に症状があるにもかかわらず心因的要素としてそれを完全に認めなかったと考えるという考え方もあります。しかし、一方で、心因的要素も被害が存在ししたと認定したという見方もあります。その上で心因的要素については個人の特殊な事情もあるため、素因減額として減額をはかったということも考えられます。
 
 いろいろ評価の分かれるところですが、心因的要素も含めて原則被害があると認定していること、心因的要素が個人の特殊要因に基づく場合に限って減額していることを考えると、立証責任をその限りで転換しているとも考えられます。難しい話で恐縮ですが、心の問題があろうとなかろうと、ともかく痛がっている以上後遺障害として認め、心の病があり、しかもそれが特殊な病であることを加害者が立証した場合には加害者を免責しようという考え方です。上記判例は民法722条を類推したことにより、心因的要素の減額について立証責任を加害者に負担させたという点ではよいかもしれません。