2014.05.26 月曜日

豊橋発:アジアの経済構造はどのように変化しているか

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 「グローバル化経済の転換点」(中井浩之著、中公新書)より
 
 貿易収支の赤字と黒字は表裏の関係にある。米国経済が悪化し、うまく支払えないとなると、商品を売っている日本や中国は売れない、債権回収できないということで、経済が悪化してしまう。関連する東南アジア諸国も売れない、債権回収できないということで経済は悪化する。おおざっぱに言えばこんなものだ。
 
 リーマンショック以降の不況下、アジア諸国の輸出は大きく落ち込んだ。中井氏の分析で特徴的なのは、米国向け輸出に比較して、対アジア向け輸出の落ち込みが著しいというのである。これはアジア諸国間の輸出がさらに進んでいたということを意味する。グローバリゼーションの進展はアジア市場の相互の輸出を拡大し、相互依存関係がさらに進んできたことを示す。
 
 中井氏の分析はさらにアジア相互関係の緊密化を具体的に説明している。
 彼はグローバリゼーション進展の具体的意味を「多国籍企業を中心とする製造業の分業ネットワークの確立」と説明する。
 
 この「ネットワーク」には特別な意味が込められている。
 製品の企画、製造、流通、販売と、様々な過程で付加価値が生み出されていく。この付加価値の積み重ねはバリューチェーンと呼ばれている。今、アジアで起こっていることは、日欧米の多国籍企業についても、特定の部門について利益をあげ、他のバリューを生み出す部門についてはアウトソーシングしているというのである。
 
 おそらく、アジア各地での企業の能力が高まり、特定の部門毎に安い人件費をてこに生産を引き受けることができるようになっているということだろう。日本のゲームメーカーは自社で全てを作らない。製品の企画を立案し、各部品の製品は全てアジアのどこかの国に外注化する。そして、最後の製品を組み立てるところは自社で行う、あるいは最後の販売のみを自社で行うということを行う。
 
 つまり、多国籍企業は、自社がどこで利益を上げるかを特定し、それ以外の部門はより生産性の高いアジアのどこかの企業、よりコストの安いアジアのどこかの企業に発注し、それをどこかで統合して、また販売するという方式なのだ。このような市場の構造の新しい変化は単純に多国籍企業がアジアのどこかの国に地元会社を設立するのとは訳が違う。
 
 この本では口には出していないが、その発想はオープンイノベーションそのものである。アジア市場は融合化が進み、アジア内の企業の独立性が高まっている。日欧米の多国籍企業は自社でイノベーションを行うのではなく、アジアの企業のイノベーションを利用しようとしている。さらに、企業間のマネジメントにイノベーションを見いだしていると言える。
 
 私は、リーマンショックも震災不況も日本やアジアに新しい経済構造をもたらすものだと信じている。アジアは経済構造を大きく変化させてきた。リーマンショックも震災もその動きを加速させるであろう。そして、世界が目指そうとしている新しい経済構造はオープンイノベーションの思想の中に見ることができると思う。