2014.05.29 木曜日

豊橋発:アジアの貿易構造の変化と中小企業の戦略

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 「グローバル化経済の転換点」(中井浩之著、中公新書)の勉強を進めている。
 
 著者の問題意識は輸出経済の国アジア諸国と輸入型経済の米国など消費国の国との関係は表裏をなしているという点にある。アジア経済は対米依存を深めながら輸出依存の工業化に成功してきた。当然の成り行きだが、リーマンショック以降の米国経済の低下はアジア経済の低下につながる。
 
 その中で、東アジアの域内輸出が対米向け輸出に比較して大きく落ち込んでいるという現象を興味深いものとして紹介している。
  これはアジア相互の依存関係が拡大しつつ、一方で東アジア全体の対米輸出が増えていったという現象を意味しているというのだ。つまり、東アジア全体の市場融合化して、相互の交流が活発になれば域内の貿易量は増える。一方で、アジア全体の米国依存度は全体として大きくなっているが、域内の上昇の方が大きいというのである。逆に、対米輸出の現象は、域内の貿易の減少を招く。その減少の量は、対米輸出の減少よりも大きいというのだ。著者はグローバリゼーションの進展により、東アジア対米国というような構造ができつつあると判断する。
 
 ところで、アジア市場の構造変化を著者はこれをアジアの分業ネットワークの進展ととらえている。
 グローバリゼーションの進展により、企業の「地理的意味での分業」が進んだ。ビデオ、カメラなどの製品中、電子制御装置など基幹部品は日本で製造するとしても、その他の部品はアジア各地で製作され、中国で組み立てられている。一つの多国籍企業が自社の工場を多国籍的に分散させると言える。私はこれはWTO以来の、投資の自由化の成果だろうと思っている。
 
 さらに、著者はこれにとどまらず、アジア内部で「企業間分業」が進んだという。アジア各国内の企業の発達が国際的なアウトソーシングを進めたというのである。コンピュータや携帯電話など商品の普及、機器、部品の標準化が進み、価格競争が激化した。その結果、メーカーは自社で部品の一部を製造するより、特定の企業に発注した方が利益になると考え始めた。これは、他方で、アジアの企業等も実力をつけはじめ、これに多国籍企業の分業要求に応えることができるようになったということなのだろうと思う。
 
 アジア内部の企業間分業の進展はアジア内部の貿易を活発化させる。アジア全体で製品を作り上げ、アジア全体が対米向けに輸出するという構造ができあがっていったのである。この分業のあり方はもちろんざまざまレベルでの分業がある。企業によっては特定の部品のみ発注して、組み立ては自社でと言うところもあるだろうし、企画の立案、製品の販売だけを自社で行い、残りの全てを分業化させるという企業もあるだろう。
 
 私は著者のこの分析はわかりやすいと思う。
 それは、昨今のグローバリゼーションの意味は市場の融合化にあると思うし、オープンイノベーションという考え方で説明できる事例が増えていると思うからだ。
 
 私はグローバリゼーションの中で、企業が生きる道を次のように考えている。
 多国籍企業にしろ、国家にしろ、融合化する市場の中で自社、自国の経済をマネジメントできる者ののみが成功する。そのマネジメントのあり方は自社内、自国内のマネジメントではなく、融合化するアジア経済の中で、自社、自国のポジションを明確に位置づけ、戦略をもってアジア各地にある企業との関係性を構築していくというものである。
 
 こうした、アジア全体の傾向から日本の中小企業の生きる道筋もかなりはっきり見えてくるのではなかろうか。日本の中小企業の強み、アイデンティティは「高品質」と「信頼」である。無理な要望にも応じ、必ずやりとげる。うそは言わず、ごまかさない。こうした信頼は日本ブランドの大きな特徴だ。これを武器に、融合化するアジア市場の中での自社の位置づけ、とくに多国籍企業のあり方の中での自社の位置づけはかなりはっきり分かるのではないだろうか。
 
 蛇足ながら、アジアに進出した日系他国製企業は日本の中小企業の「高品質」と「信頼」を求めている。「中国の値段で日本の品質」、また、中小企業のクオリティを多様に集積させて製品を作り上げ、大企業によってマネジメントされた市場に流通されるという方法もあるかもしれない。私はそうして成功している事例を知っている。