2014.10.28 火曜日

豊橋発:税務の解釈と法務の解釈

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 税務訴訟や審判例などを読んでいると、税務と法務の解釈が違うというのがけっこう当たり前に出てくる。私に言わせると、課税の対象となった事由が、私法上の実体的な効果を基にしている以上、私法の解釈があってそれを前提に税法上の解釈があるというのは当たり前のように思うが税務の実務ではそうでもないらしい。
 
 実際、税務にあっては法律的な形式を理由として、実質的な税金逃れをしようという事例が多いため、税務署も私法と税務は別問題という姿勢に出るのかも知れない。
 
 本件は武富士社長が外国会社の株式を息子(原告)に平成11年12月27日に贈与した事例である。杉並税務署長は株式の評価額を1653億0603万1200円と評価し、納付すべき贈与税額を1157億0290万1700円とした。
 
 租税法1条の2によれば、贈与により取得した財産が国外にある場合は、受贈者が当該贈与を受けた時において国内に住所を有することが課税要件とされている(平成15年改正前当時)。そのため、原告が国内に住居を有するか否かが争点となった。
 
 判決は非常に劇的な経過をたどっている。一審は課税処分を取り消したが、二審は逆に税務署長の処分を是認した。さらに最高裁判所は一審を支持して、課税処分取り消しを是認したのだ(最小2判決H23.2.18)。本件では原告は1157億0290万1700円という高額な贈与税を免れる結果となったのである。
 
 一審、二審、最高裁といずれも、租税法1条の「住所」が民法が定める「住所」の定義に従うことに争いはなかった。民法第22条な「各人の生活の本拠をその者の住所とする。」と定めているため、本件は「生活の本拠」の解釈が問題になったのである。
 
 すなわち、問題は住所の判断に当たって、贈与税を免れる意図がどの程度「本拠」の判断に影響を及ぼすかが問題になったのである。原審及び最高裁は客観的に判断するべきとして、相続税を免れる意図を重視しなかったのである。
 
 住所は法律適用の基準として極めて重要な意味を持つ。法律的な文書の送達、社会保障、課税、その他、数え切れない法律の適用基準となるものである。そのような住所が局面によって住所となったり住所ならなかったりするのは不都合であることは明らかである。
 
 そうだとすると、税を免れる意図が重視されるのは不都合ということになるだろう。つまり、世の中は租税のためだけにあるのではない。住所は課税だけなく日常生活の様々な局面で法適用の基準として機能する。課税だけに特権的地位を与える理由はない。
 
 金持ちが巨額の税金を免れるのは悔しいが、しかたがないと言うところだろう。