2015.05.08 金曜日

豊橋発:「いなば和幸」と「とんかつ和幸」

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 「とんかつ和幸」は昭和33年川崎駅ビル内に開業したのを始まりに、その後新聞や雑誌などに紹介されるようになって実績を伸ばし、全国展開してきた。平成21年では「とんかつ和幸」の名前を使った店舗は96店に及ぶ。
 
 この件は、和幸グループからの独立を契機に原告が「いなば和幸」と商号を改め、「いなば和幸」の文字からなり、指定役務を「飲食物の提供」として商標登録を行った。ところが、本家筋の「とんかつ和幸」が、和幸の名前が入った商売はけしからんというので、「いなば和幸」の商標登録の取消をもとめたものである。
 
 特許庁は類似するとして商標登録を取り消す決定をした。これに対して、東京高裁は登録商標を維持して、特許庁の決定を取り消した。取消の取消が重なりなんだかややこしい。これは特許など知的財産のしくみがそうなっているからだ。
 
 登録商標→相手方の「異議申立」→特許庁の決定→特許庁に対する訴訟
 
 「いなば和幸」と「とんかつ和幸」とは「和幸」が同じだ。こうした構成部分の一部が同一または類似するだけで全部同じだと判断してもよいだろうか。
 最高裁判所は類似するかどうかは、一部だけとりあげて判断してはいけない。商標全体を観察した上で、取引の実情を考慮して判断するべきであるとしている(S38.12.5判決、H5.9.10)。
 
 この場合、類似するかどうかという判断は商標の役割を基準に判断することになる。つまり商標とういのは、商品の出所を明らかにするという出所識別標識として機能するかどうか判断される。「和幸」といえば「とんかつ和幸」というほど一般的な意識が浸透しているかどうかによって決まることになる。知財高裁は、一般的に混同が生じるようなものではないとして「とんかつ和幸」の主張を退けたのである(H22.3.29、判タ1359号234頁)。