2015.05.21 木曜日

豊橋発:職場のうつ病をどのように見るか

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中小企業の相談で最近社員のうつ病に関する相談が多い。

 うつ病は本人の愁訴を中心にするので、うつ病の診断書はわりあい簡単に出るという印象だ。しかし、このような詐病の問題は別として、社員のうつ病対策は企業にとって「モダンタイムズ」以来の古典的で、かつ普遍的な課題だ。
 
 会社は安全配慮義務の一つとして、職場の人間関係に配慮する義務がある。例えば、派遣労働者が職場の人間関係からうつ病となり自殺に追い込まれた場合に、安全配慮義務違反として賠償責任の対象となりうる(東京地裁H17.3.31判時1912号40頁)。
 
 このような場合の賠償金は場合によっては1億円を超えることもある。社員の自殺に責任を負わされるような企業はよほどひどい職場なのだが、企業防衛という点から言ってもうつ病対策は重要となる。特定の従業員のために労働組合が断交することもあるが、最近はうつ病に対する責任追及という例もよくみられる。
 
 企業の生産性から言ってもうつ病対策は重要だ。精神的な病から判断ミス、人間関係の悪化、事故などが生じれば会社にとっても大きな損失となる。働き盛りとなり職場でも中核的な存在となった人材がうつ病となり、しばしば職場を休む、リーダーシップを発揮できない、会社としても配慮しなければならないとなれば会社にとっての損失も大きい。
 
 しかし、そもそも会社は何のためにあるのか、誰に対して責任を負っているのかという根本問題が問われなければならない。会社は株主のものではない。中小企業と言っても社長一人のものではない。会社はそこを構成する全ての人の幸せを実現するためにあるものだ。社長は社員の幸せに責任を持つ存在だ。こうした発想があって初めてうつ病の課題が見えてくる。
 
 今月号のウェッジにこうしたうつ病の問題が取り上げられている。納期が近づけば深夜残業が当たり前となっている職場、一日中PCに向かいキーボードばかりを打つづける職場、厳しいノルマとリーダーシップが求められる職場、仕事のストレスはたまってはないだろうか。
 
 ドラッカーは社員はけっして報酬のためだけに働くのではないという。社員は職場に帰属することで社会に帰属すると感じられること、職業を通じて自己実現を図ろうとしていることを望んでいる。うつ病問題は社員一人一人に向けられた会社の姿勢が問われている。
 
   なお、心理的負担と労働災害の関係については社労士と相談されてはどうだろうか。労働災害の認定基準に照らして、我が社がどうであるかなど、職場環境について再検討することは有益だと思う。
 
  心理的負荷による精神障害の認定基準について