2015.09.09 水曜日

豊橋発:卒をみること嬰児のごとし

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 孫子は言う。
 兵士たちに接する態度は赤ん坊に対するようにすべきだという。そうすれば,兵士たちは将軍のために,危険な谷底にだってついていくだろう。孫子はこんな風に表現している。
 
 「卒を視ること嬰児のごとし。故に之れ,深谿(しんけい)にもおもむくべし。」
 
 兵士たちに接する態度は愛する子供のごとくにすべきだ。そうすれば,将軍は兵士と生死をともにすることができるだろう。それが,孫子の次の言葉だ。
 
 「卒を視ること愛子の如し。故に之れ,ともに死すべし。」
 
 しかし,孫子は甘くはない。やさしく接するのみで,軍規を統制できなかったり,命令しても実行しないようなものはだめだという。孫子は規律にはかなり厳しい。
 
 「たとうれば,驕子(おごったわがままな子)のごとくにして,用うるべからざるなり。」
 
 古来中国では部下に対する対応を示した文書が多い。史記列伝でもこうした優しさと厳しさの両面は常に強調されている。例えば,紀元前500年ころ,斉の景公の時代,「司馬穣しょ」という将軍の話がある。彼は兵士と同じ場所に寝,兵士と同じ衣類をまとい,兵士と同じ食べ物を食べた。多くの兵が彼を慕い,病人までもが行軍に加わった。しかし,彼は規律には厳しく,規律を破った者は王の側近であっても斬首にした。
 
 もちろん,孫子の兵士に対する思想はかなり厳しい。実際には兵士をそれほど信用していない。彼は厳しい規律を求めていた。さらに,兵には窮地に追い詰めれば,自ずと命をかけて軍に仕えるという思想の持ち主だった。兵士には何事も秘密にし,自軍の兵士が気どられぬように敵地におもむき,もはや戦うしかないところまで追い詰めることが大切だとも言う。
 
 このあたりは,戦時における人の操作術と平時における人の操作術と根本的に違うところがある。嬰児のごとく,愛子のごとく部下を視ることはどちらも必要だろう。社内の厳しい規律も必要だろう。
 
 しかし,会社経営のように平時の発展を願う組織にあっては,成果に向かって事業目的を共有することは大切だ。それは組織の透明化であったり,情報の共有化であったり,ものをつくることの喜びの共有化であったりする。
 
 時々,資本主義経済を勘違いして,いつでもどこでも戦場のように考える経営者がおり,部下にやたらと軍隊式に接している場合があるが,私は大いなる誤りだと思う。