2015.09.16 水曜日

豊橋発:借入金の使途

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 銀行からは使途を明示して借り入れる。資金使途と異なった使い方をした場合には借主はどんな責任を負うだろうか。
 
 東京地裁の裁判例は,外食事業を買い受けることを目的に,銀行より5億円の融資を受けた事例だ。
 A社からZ社への事業譲渡計画書が銀行に提示されたが,これはZ社の代表取締役Yはこの時に事業譲渡の合意書などについてA社名義を偽造したものであった。実際には事業譲渡があったとは言えない状態だったようだ。
 
 銀行から融資を受けた5億円はZ社に振り込まれたが,翌日にはYが運営していた会社に振り込まれてしまった。銀行としては騙されたということになる。
 
 そこで,銀行がこの代表取締役相手に,詐欺を理由に損害賠償請求の訴えを提起した。詐欺行為であれば不法行為であるため,Z社の代表者Y個人が責任を負うことになる。
 
 これだけみると,認められてもよさそうなのだが,判決は請求棄却,銀行側の敗訴となっている(東京地裁H23.12.21,判時83頁)。つまり,事業譲渡の購入資金を目的としていたが,明確な使途の合意は無かったというのである。
 
 ① 本件は手形貸付の形式であり,消費貸借契約上明確に使途が定められていないこと。
 ② AとZとの間では事業譲渡の話が継続していること。
 ③ Zは借入当時2億円程度の預金を預けていることから騙す目的があったとは言い難いこと。
 
 確かに,銀行の契約書を見ると使途を明示しているわけではない。銀行の貸付金そのものは,仮に投資目的で借りても運転資金に利用されることはめずらしくない。銀行借入に際しての契約書も一般的に金銭を貸し付けるとしかなっていない。
 
 企業への借り入れについては代表者個人との間で連帯保証契約を結ぶのであるが,連帯保証の対象は,およそ金銭消費貸借で,借入目的に応じて保証債務の内容が変わるわけではない。
 
 貸し付けの目的については,銀行が貸し付けるに際して内部的審査の問題だとも言える。