2015.10.21 水曜日

豊橋発:税理士の債務不履行

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 税理士を被告にした裁判事例はけっこう多い。過少申告や加算税、重加算税などは税務署がはっきり指摘してしまうし、お金も支払わなければならないので当事者にも痛みが加わる。この点、弁護士とは違うのかも知れない。
 
 相続に当たっては海外資産も相続財産として申告しなければならない。ところが、税理士が海外資産は全くないものとして確定申告した。被相続人の生前の生活からすれば海外資産がないのはとても不自然だったのだろう。国税局が調査を開始した。
 
 その結果、海外の別荘、預金などの存在が判明したため、修正申告として妻は1億4500万円、子供らは2000万円から3000万円の修正申告をした。さらに、妻は加算税163万円、重加算税450万円、延滞税847万円、子供らも相応の加算税などを納付している。
 
 この税理士はかなり問題がある。
 判決文によると、海外資産の取り扱いについて遺族が尋ねると「海外の件は調べなくてもよい。」「お国が違うんだからいいんだ。」と言ったらしい。
 
 その上、国税局の税務調査が始まると「意思疎通が円滑にいかなくなりましたので」とFAXを送って、とっとと辞任してしまった。修正申告の問題については「見解の相違」として片付けている。
 
 これでは遺族が怒ることは当たり前だ。もし、これが弁護士だったら弁護士生命にかかわるほど深刻な誤りということになる。
 
 税理士側は国内外の資産を問わず、全ての資産に関する資料を提出するように指示したが、提出された資料には海外資産は含まれていなかった、税理士側には落ち度はないと反論している。
 
 判決文は税理士側の主張を退けている(東京地裁H24.1.30判時2151、36頁)。
 税理士は税の専門家として「高度の注意義務」があり、提出された資料ばかりでなく、それが不十分であったり、不適切であった場合には税理士の「指示説明が不適切であるために、これに依拠して申告書を作成すると適正な税務申告がされないおそれがあるとき」は改めて指示したりして適正さを追求する義務があるとした。
 
 この問題は税理士と依頼者との関係で税理士の義務の範囲が決まるという判断があるとも考えられる。つまり、税理士がどこまで調査するべきかについては、依頼者に対する「説明」、「指示」がどこまで適切であるかによって異なってくるとも考えられるからだ。
 
 ちなみに、本件では重加算税が追徴されているが、税理士側の責任が重い場合に果たして重加算税を課してよいかは検討の余地があるように思う。重加算税部分については異議申立などしてもよかったのではないかと思われる。