2015.11.06 金曜日

豊橋発:隠ぺい、仮装行為と重加算税の賦課

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納税者の経理上の処理がまずかったために過少申告となってしまう場合があるが、重加算税を避ける為に日頃からどんなことに気をつけたらよいだろうか。

1.. Xの事業の概要
 Xはスーパーマーケット等の店頭などの場所を借りて売子に商品の販売を行わせるものである。売子がXから仕入れた商品を販売する取引(販売員取引)と売子が自ら調達した商品を販売する取引(帳合先取引)の2つの形態がある。
 商品販売の売上金はスーパー等の取り分(歩銭)が差し引かれた後に受け取り(受取金員)、当該金員から、ロイヤリティ(拡張員帳合料収入)、販売経費、スーパー等の販路の拡張に携わった者に支払う拡張員帳合料、売子への貸付車両などの賃料などを控除した後の金員をXから売子に支払っている。
 Xは販売員取引については「支払明細書」と題する帳票を、帳合取引については「御取引先別台帳」と題する帳票をいずれも各売子ごとに作成していた。これらの帳票については、本件事業にかかる商品の売上額、歩銭が記帳されているほか、売子への支払に先立って控除されるリース料、諸経費、立替経費などが記載され、最終的に売子に支払われる金額も記載されている。
 
2. 本件申告
 Xは各売子ごとに発生する販売経費、帳合料などは支出毎に記帳し、自動車等の減価償却費なども毎年処理していた。販売員取引ではXはスーパー等からの受取金を経費処理などとともに売上勘定に計上していたものの、販売員取引ではいったん仮受金勘定として処理し、売上勘定に振り替えられることなく放置した。そのため、仮受金は累増する結果となった。
 以上からXのロイヤリティ収入等が申告漏れとなった。この点、指摘を受け、Xは法人税並びに消費税及び地方消費税の修正申告をしたが、原処分庁は仮受金に関する経理処理が隠ぺい又は仮装に当たるなどとして重加算税の賦課決定処分を行った。
 この処分に対してXが重加算税処分の取消を求めた。
 
3. 争点と判断
 「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」課せられる(国税通則法第68条第1項)。本件では①仮受金勘定のまま放置したことが仮装、隠ぺい行為にあたるか、②税理士か関与して申告されたのであるが、この場合、納税者自身が仮装し、隠ぺいしたと言えるかが問題となる。
 
4. 裁決
 裁決では次点を指摘し、「重加算税を賦課することは相当ではない」とした。
1) 隠匿について
  拡張員帳合料などが記載された現金出納帳を提出していたこと、また、「本件御取引先別台帳の保管状況はそれが隠匿されていたとはいい難い」ことから隠匿とは言えないとした。
2) 虚偽記載について
  拡張員帳合料を外注費として記載してたことについては、Xの業態を熟知した税理士によるの創業以来の指導に基づいて記載し、その後D税理士に引き継ぐ際に記載に内容について説明していないとしても、「故意の隠ぺい又は仮装の行為であるとか、過少申告の確定的意図を外部からうかがい得る特段の行動であるなどということはできない。」とした。なお、税理士の担当事務員は創業以来一貫してEが行っていた。
3) 仮受金勘定累増について
 仮受金勘定累増の認識はあったものの、「D税理士及びEが、帳簿書類等について十分な検討をし、かつ、意思疎通を十分に図るなどして原因を解明して適正な経理処理をすべきであり、請求人の経理処理が適正さを欠いた処理であったことについて非難を加えられるべきことであったとしても、請求人が積極的な意思をもってあえて適正な経理処理を行うことなくこれを放置したとまで認めるには至らず、かかる仮受金勘定の誤った経理処理をもって、故意の隠ぺい又は仮装の行為や過少申告の確定的意図を外部からうかがい得る特段の行動があったとまでいうことはできない。」とした。
 
5.  評価
1) 仮装などのついて
 仮装、隠ぺいの要件について最高裁は「過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為」が必要であるが、それは「架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合」であるとする(最判第二小H7.4.28判決.民集49巻4号1193頁)。従って、「過少申告する意図」が外部的に現れず、不注意にも過少申告を知らなかったという場合には原則として重加算税の対象にならない。本件は税理士の処理に任せていたこと、税理士に処理するだけの情報を得る機会が与えられていたことが主な理由され「過少申告する意図」が認められないとした。
2) 税理士の役割
 ところで、隠ぺいなどについては経理担当の従業員など納税者に管理監督責任がある場合についても行為者と納税者と同一視して重加算税を課している。しかし、税理士については税の専門家として国が資格を与えている地位をかんがみ、納税者が税理士に委ねている場合には直ちに重加算税を課している訳ではない。最高裁は納税者と隠ぺいなどした税理士との間で「意思の連絡」があったことが必要であるとしている(最判二小H17.1.17民集第59巻1号28頁)。本件でも税理士との「意思疎通の欠如などにより」過少申告になってしまったとして「意思の連絡」を否定している。
3) 教訓
 税理士が関与していたとしても過少申告と判断される事態を完全に避けることはできない。この場合、重加算税を避けるためには依頼者には税理士が日常的に帳簿類を閲覧できる環境を作ること、納税者が常に税理士の指導に従って経理などの処理をおこなうことが必要である。