2013.11.18 月曜日
豊橋発:他覚所見に乏しい交渉の事例
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本件は深刻な腰部痛の後遺障害のあった事例だ。当事務所がかなり力を入れた事件で、14級か12級か争いになった。12級はとれなかったが、9%の喪失率というよい結果を得ることができた。
この事例では腰部についてMRIについては「椎間板の膨隆」はあるものの神経根、脊髄の圧迫所見は見られない。腱反射は正常で他覚的に神経系統の障害を示す検査結果はない。わずかに後遺障害診断書に腰椎すべり症、椎間板障害軽度ありと記されていた。これについては事前認定では14級となり裁判となった。異議申立もしたのだが、後から考えれば、異議申立は無駄だった。
これだけでは通常14級で終わる事件だが、私たちは訴訟では12級を主張した。原告側の主張は後遺障害の判断は医学的判断ではなく、法的判断であるというものだ。つまり、医証だけで判断するのは誤りで、医証は判断の1要素でしかない。重要なのは被害の実態を直視することだという主張を展開した。
裁判所は14級を維持したが、労働能力喪失率を9%とし、喪失期間を7年と判断した。後遺症慰謝料は110万円を認定した。本件は医証だけからは14級となる事例でも、生活被害の重大性から5%を上回る認定をした事例として意義深いと考えられる(名古屋地裁H24年4月18日判決、平成22年(ワ)第3908号)。
本件の立証方針は単純だ。要するに事故直前は普通に仕事ができ、生活していたのに、事故直後から悪化し、そのまま回復しないで今日まで来ている。事故前、事故後の生活上の落差を直視せよというものだ。最終準備書面は概ね次のような項目となった。
① 事故の態様。被害者にいかに大きな衝撃が走ったかを車の損傷状況、事故時の被害者の姿勢から立証し た。 ② 痛みの変化 1.事故前の生活状況 2.事故直前の生活状況(特に事故の前日、当日) 3.事故直後の生活の変化(症状固定後の変化は後遺障害の程度で明らかにした。) 4.カルテなどからみられる治療経過(鎮痛剤などの投与回数、患者の訴え内容、通院頻度など) ③ 症状固定後の生活の変化 1.職業上の生活の変化 2.私生活上の生活の変化 ④ 医学的な立証 1.患者の被害のレベルからいって、最も合理的と思われる疾病名を推定する。 2.立証責任の転換についての法律的論争。つまり、ある程度医学的に合理性をもって説明できれば、そうで ないことを被告側が立証するべきであるという議論。 3.事前認定制度、異議申立制度の致命的な欠陥(医証でしか判断しないこと、大量処理のために定型的、 機械的判断ですましてしまい、患者の具体的状況を見ていないこと。)
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