2013.12.19 木曜日
豊橋発:交通事故と破産③ 被害者が破産した場合の問題(逸失利益について)
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交通事故の後,仕事を失ったり収入が減ったりする一方で,治療費等の費用や生活費がかさみ,その結果破産せざるを得なくなる場合があります。
前々回(http://blogs.yahoo.co.jp/eandjnagoya/30458088.html)の,加害者側の破産の問題,そして前回(http://blogs.yahoo.co.jp/eandjnagoya/30781978.html)の被害者側が破産した場合の慰謝料請求権の扱いについての問題に引き続き,今回は,被害者が破産した場合の逸失利益がどうなるかの問題を検討したいと思います。
逸失利益というのは,交通事故によって後遺障害が残ることで,将来にわたって収入が得られなくなったり、収入が減ったりした場合の,その得られなくなった収入額のことをいいます(http://nagoya-jiko.net/symptom/calculation.html)。
この逸失利益は,前回説明した慰謝料請求権とは違って,行使上の一身専属請求権とはされていません。また,差押禁止財産(民事執行法131条)にも含まれていません。
そうすると,原則としては破産法34条3項の適用がないことになり,債権者に配当される財産に含まれてしまう(破産財団に含まれてしまう)ことになってしまいます。このため,破産する被害者の方の手元には逸失利益の金額が残らないことになってしまいます。
しかし,逸失利益は被害者の方の将来の収入減少分の金額ですので,そのような金額が全て債権者へ配当されるというのは被害者の方にとって酷ですし,将来の経済的な安定が図れない結果となります。ただ一方で,将来の請求権についても破産財団に含まれるという破産法34条2項の規定との対比からすると,法律の解釈上は,逸失利益が破産財団に含まれないとすることは難しいところがあります。
そこで,この問題の調整としては,自由財産の拡張(破産法34条4項)の制度を使うことが考えられます。この制度は,破産者の生活の状況や破産者の収入を得る見込み等の事情を考慮して,裁判所の判断で,自由財産(破産者の手元に残る財産)の範囲が拡張されるというものです。
特に重度の後遺障害を負われた方の場合,逸失利益の全てが破産財団の対象になってしまうと,将来の収入の増加がより期待しづらいために生活再建が不可能になってしまう危険性が大きいということも考慮して,この自由財産の拡張が積極的に活用されることが望まれます
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